陶器へのいざない


弊社deco+で基本扱っている陶器なるものは花器となるわけですが、さまざまな種類の素材と形状などがあります。その一部である日本の陶器について少し掘り下げてご紹介します。

1.日本の陶磁器におけるかんたんな歴史
2.陶磁器の産地など
3.さいごに

1.日本の陶磁器におけるかんたんな歴史

陶磁器とは成形した土を窯で焼き上げてつくる器です。日本では、古くは1万年以上も前から縄文式ととよばれる土器がつくられていましたが、これらは焼成温度が低く軟らかいため、現在は容器としては無理が出るもので利用できないほどです。

古墳時代(5世紀ころ)になると、中国・朝鮮からの伝来で、日本でも硬い陶磁器がつくられるようになりましたが、それらは上層階級向けの貴重品でありました。

日本で陶磁器が庶民にも広がり、各地で窯が開設されるようになったは、平安時代後期の12世紀ころです。これらの窯は中世に隆盛し、そのうちいくつかは現在でも有名な産地として陶磁器を生産しているが、昭和30年代に「常滑」「越前」「信楽」「丹波」「備前」「瀬戸」の6ヶ所の窯について「六古窯(ろっこよう)」という名前が付けられました。

これらの窯で製造されるものは、いずれも焼成温度が比較的低い陶磁器の焼き物です。中国では1世紀にすでに「青磁」が、現代の陶器と同質の「白磁」も6世紀には焼かれていますが、日本では陶器質の焼き物が焼かれるようになったのは1610年代のことになります。

諸説では、豊臣秀吉の朝鮮出兵により日本に連行された朝鮮の陶工が佐賀県有田で窯を開いたのがはじまりとされています。有田の磁器は、中国が政権交代の混乱期にある17世紀中ごろから中国磁器の代替物として近隣の伊万里港から大量に西洋に輸出されて、中国磁器と同等の評価を受けるようになります。これらの焼き物は、出荷港の名をとり「伊万里焼」と呼ばれるようになります。

陶器質の製品と並行して、日本の陶磁器史の特徴的な流れとなったのは、茶道具としての焼き物です。室町時代の茶道具は、中国産(唐物)を第一としていたが、千利休を完成者とする侘び茶の浸透によりまったく新しい価値観が加わります。その流れの中で、朝鮮半島の庶民の茶器が高麗茶器として珍重され、庶民の食器をつくっていた信楽、備前の焼き物が茶道具して取り上げられるようになります。

さらに利休のプロデュースで陶工長次郎が焼きた楽焼、歪んだ造形で知られる織部焼きなど、独創性ある茶器が生み出されることになりました。

2.陶磁器の産地など

●常滑(とこなめ):愛知県知多半島一帯で窯が分布する中世最大の産地。壷や瓶などが多く、全国各地で使用されています。

●信楽(しがらき):滋賀県信楽町。常滑焼の影響を受けて発達します。茶道具としても有名ですが、なんといってもタヌキの置物は信楽焼なんです!

●備前(びぜん):岡山県備前市。古代の須恵器の系統を引きます。他の陶器よりも硬く、分類ではせっ器に属します。吸水率が低いので、藍染の瓶などに適しています。茶道具としても有名です。窯の中で偶然に変化してできる模様(窯変)が特徴です。

●瀬戸:愛知県瀬戸市。他の古窯とはちがい、当初から施釉(ガラス質の釉薬をかけること)陶器をつくっていました。中国の陶磁器を模した茶道具を製作し、1800年代からも陶器も製作しています。

●志野:岐阜県の美濃窯で作られた乳白色の釉薬で知られる焼き物です。

●織部:江戸初期の茶人、古田織部好みの茶陶。産地は主に美濃窯。その後各地で類似様式のものが製作されました。コントラストの強い色彩や、極端に歪んだ造形が特徴です。

●京焼:長次郎の楽焼などにはじまり、江戸時代、京都の諸窯で焼かれた焼き物。清水焼もその一種となります。作風は多様で、本阿弥光悦、野々村仁清、尾方乾山などの作家の名前が知られていることも特徴です。

●益子:栃木県益子町。民芸運動の濱田庄司が窯を構えて製作したことで、民芸陶器の重要な産地となりました。

●伊万里(有田):陶器の世界的ブランドです。初期は染付(白地にコバルトで絵付け)し、その後色絵(多色の絵付けがされる)、金襴手(色絵に金箔、金泥を加えた豪華な絵付け)などが登場します。江戸時代の伊万里を古伊万里といいます。

●九谷:石川県九谷周辺の陶器のこと。江戸時代の九谷(古九谷)の名品は大半が有田産であるという説が現在は有力。全面を緑または黄色で塗りつぶした絵皿が有名です。

●鍋島:佐賀の鍋島藩が優秀な陶工を抱えて作成した磁器。主に献上品であり、一般には流通しない芸術的香りの高いものになります。

3.さいごに

茶器にしろ花器にしろ土から出来ている陶磁器には、各地の土と釉薬などでオリジナルな味が出てきます。形も味だし、色も味。信楽のようなタヌキさんも今やいろんなバージョンが増えて楽しいものです。なんとなく落ち着く気持ちになるのは、そんな風土を感じることができるものかもしれませんね。